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よしながふみ「大奥」11巻レビュー

      2015/08/30

よしながふみ「大奥」11巻

よしながふみ先生の「大奥」11巻がいつの間にか出てました。
ネタバレ等多いレビュー記事です。
ネタバレの嫌な人はこの記事を読まないようにしてください。


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さて、今回は全巻のラストで3代以来久しぶりの男子が、11代家斉として将軍職に就任しました。吉宗の孫、一橋卿治済の息子になります。
田沼は失脚し、既に政権の場から退場しています。次の老中となったのは、松平定信。彼女もまた吉宗の孫です。おばかだけど素直で、表裏を作れないタイプの子です。吉宗を心から崇拝し、老中になった後には問題に真摯に対応しています。
よしながふみ「大奥」11巻
吉宗や、田沼のように決して才覚があるわけではありませんし、その性格は真面目すぎるため庶民には厳しく映りますが、信念を持って恥じることのない行動を取ろうとしているのはなんとなくわかります。定信ちゃんかわいいな。

一方で、将軍の母となって実質的に最高権力を得た治済には、何もありません。治済があんまりにも陰謀を張り巡らせ過ぎるので、周囲の者は事あるごとに治済のサイコな部分を感じとってゾッとします。実際、嫌な性格では収まりきらない治済の所業は、多分多くの読者の心に嫌な冷たさを落としたでしょう。夏の読み物としてはかなりのものではないかと思います。

そんな夏の大奥ホラーストーリーの中で、癒し担当になるのは意外にも将軍です。
よしながふみ「大奥」11巻
癒し担当がいい歳したお兄ちゃんってあたりがよしなが先生っぽいですね。素直な性格、そして愚鈍でもありません。ただ、母親の傍に一番居た人間でもあり、「よくわきまえて」生きています。いわゆる「いい人だけど何もできない人」です。
さて、政の世界では治済が思うままに生きていますが、田沼の元で赤面疱瘡の根絶を志していた人たちもまた、懸命にその志を折らぬように耐え忍んで生きていました。
青沼は残念ながら斬首となりましたが、黒木や伊兵衛は私設の診療所を開いています。お半下の僖助は、薬種問屋の田嶋屋に婿入りし、資金面で彼らをサポートしています。田嶋屋さんが続いているのは何よりです。

黒木さんは大奥に長く勤めていましたが、女性を見る目に曇りはなく、とてもよい奥さんとの縁ができました。やがて彼女が子を授かり、男の子を出産します。男の子は青史郎と名づけられます。そしてこの子どもが生まれたことにより、赤面疱瘡の撲滅を目指すため、黒木は旅にでる決意をするのです。かつての、源内のように。
よしながふみ「大奥」11巻
最終的に、旅から戻った黒木はとうとう赤面疱瘡撲滅のための「解答」を得ます。そして、源内が天才だった、と改めて思うのです。

一方、江戸城では、穏やかで将軍のよき伴侶であった御台所が錯乱して将軍にすがりつくのでした。御台所は治済の心の奥底に触れて、彼女が怪物であると知ってしまったのです。御台所の言葉を聞いて、将軍もとうとう母の言いなりではだめだと、決意をしたのでした。

この巻では暗黙の了解として、赤面疱瘡の撲滅には蘭学が必須である、という流れになっています。次の巻で蘭学は再び幕府に認められるのか、ということが焦点になるのでしょうか。大奥はこのまま正史の流れで行くのかな~。次の将軍はどうなるんだろう。まあ、少なくとも赤面疱瘡を撲滅するためには、家斉が母親を排除することが必須だろうなとはわかります。母親の恐ろしさを一番垣間見ているのは家斉でしょうが、彼には化け物退治の経験値はなさそうだな。

次の巻は来年の秋頃なんだそうです。また来年、って感じですね。
気長に待つことにします。

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