「ダ・ヴィンチと禁断の謎」のメインテーマに仕込まれたダ・ヴィンチらしい「仕組み」に驚いた話。
2015/08/29
FOXでダヴィンチと禁断の謎を毎週視ています。
ものっすごいお金かけて作ってそうな、ドラマというよりは映画に近い感じの番組ですが、予算が尽きちゃわないかとても心配です。
レオナルド・ダ・ヴィンチと言えばもうなんか色んなジャンルに博識な天才で、モナ・リザをはじめ、彼の残した功績、作品は多く人々に知られています。
今回のドラマは、史実の上で数年間記録が残っていない彼の若いころを、情勢や前後の時間軸を元に想像等で補ってドラマ化したものなわけですが、時代考証がそれなりにされた舞台セットや衣装、そしてちょっと胡散臭い彼の発明品やアイディアがとても楽しめます。
これとか動力どうなってんだ的な。
ドラマを作品として評価すると、現在のところまで(繰り返しになりますが)とてもお金がかかっている。VFXもとてもセンスがよく、レオナルドの思考を表現する場面で割と使われる線画的なエフェクトはとてもレオナルド・ダ・ヴィンチらしい効果だと思います。
そして、嘘(想像)と史実がとてもよく織り混ざっていて視ていて話の進行がとてもスムーズ。うっかりよそ見していると進行が解らなくなりかける時があるくらい進行も早めで、もたもたしていません。
で、ここからが本題なのですが、このドラマは本体のクオリティもオススメできるものですが、オープニングに使われているメインテーマがとてもよい。チェロで始まる(と思っていたけども後からチェロじゃないと知る)旋律は確実にドラマの雰囲気を2倍増しさせていると思います。
探してみたらアマゾンで普通にMP3が販売されていました。ちぇけら。
余談ですが、ついでに輸入DVDとBlu-Rayも見つけましたが、輸入品なのでDVDはリージョン1だしBlu-RayはリージョンAだけど日本語が入ってない。ということはまだ日本での発売は先ってことですかね。
このメインテーマ、作曲したのはベア・マクレアリー(Bear McCreary)。
公式サイトのブログにメインテーマについての記事があります。
そしてこの記事、ものすごい驚いたので、急角度で斜め読み翻訳してみます。
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とりあえずブログの前半は、イタリア・フローレンス(Florence)のドゥオーモ(Duomo)のカフェテリアの軒先の席で下書きしたモノなのだそうです。大雑把に斜め読みした感じ、メインテーマの演奏にはCalder Quartetが参加しているのだそうです。Calder Quartetはロサンゼルス生まれの弦楽四重奏団。四人組。
各キャラクターのテーマのいくつかはレオナルド・ダ・ヴィンチの時代の音楽様式を取り入れて作ってるらしいです。各キャラクターにテーマがあったのだね。今知った。
そして、なんでも年末くらいまでにサウンドトラックが発売されるようです。あと、シーズン1は8話だけのようです。えっ、そうなの?
その他色々、実に長い前置きがあって、ようやくスコアの話。
初っ端の構想ではルネッサンス時代の楽器の音色、音楽様式をふんだんに研究して吸収してスコアを書こうと考えていたそうですが、プロデューサーのデヴィッド・ゴイヤーと打ち合わせをして改めることにしたそうです。
In my initial conversations with David Goyer, however, he told me specifically that he didn’t want to hear Renaissance music in this score. He wanted a bold and stylistic approach to match the contemporary tone of the visuals and editing style. And he was right. Proper Renaissance music lacks the necessary tension, precisely because the timbres and chords we associate with certain cinematic emotions simply hadn’t come into practice yet.
ルネッサンス時代の音楽、音色、コードでは今回のドラマに対応できる程の緊張感その他を表現しきれないだろうと思ったため。確かに、ルネッサンス時代の楽器類でサスペンス風の音楽とかちょっと想像し難い気がします。
ともあれ、打合せ等を済ませて頑張ってスコアを仕上げてみたら、
The orchestra, string quartet, percussion and synthesis give the score weight, a bottom-heavy heft.
構成はオケ、カルテット、打楽器にシンセ。豪勢にも程があります。当然のことながらスコアがえらいこと重くなったとか。
ともあれ試しに作ってみた曲は、曲の合間に突如としてルネッサンス期のような音が大胆不敵に浮かび上がる。ゴイヤーはそれを聞いてちょー大喜び(超意訳)。これこれ、この路線で行こうよってことになったのだとか。
いよいよ、驚きの本題です。
As demonstrated in the videoblog, Leonardo’s Theme is a palindrome, inspired by the mirror writing (writing backwards and forwards) that he is famous for. In music, this technique is an established trick called ‘retrograde.’ The theme is the same when played forwards or backwards. The melodic symmetry is visible, even at a glance:
動画のレオナルドのテーマは、レオナルドの鏡文字にインスパイアを受けて回文構造になってるとのこと。・・・・回文??
うわ本当だ!この人天才か変態だよ!
逆から辿ってもちゃんとメインテーマだ!
確かにテレビのオープニング聞いてて、全音符のAs、Aフラットの後がなんでか間延びしてるなとは思っていましたが、まさかの回文。ぐううぬ。
後は、冒頭メインテーマの旋律が入る前に聞こえるオスティナート。
Carder Quartetが演奏しているそうですが、
CフラットとBはちがくて。なのです。
こういう表現は作曲家の趣向が現れやすい部分のひとつだなと思います。
さらに、メインテーマはチェロだとばかり思っていたら、
After four bars, the Da Vinci Forward Theme is introduced by a solo viola da gamba accompanied by lutes.
なんとヴィオラ・ダ・ガンバ(viola da gamba)とリュートを使っているのですね。
そしてこのテーマ曲をオープニングで使うにあたり、
David Goyer was so impressed with my music, that he insisted the title sequence be extended, to allow time for a final statement of the Forward Theme. This is a virtually unprecedented example of a showrunner sacrificing valuable narrative real estate in order to properly introduce audiences to the show’s score and main theme.
ものすごい意訳:
ゴイヤーが音楽を大層気に入ってくれて、(回文にした旋律の)前半を終えるまではオープニングの時間を延ばそうと主張してくれた。これは曲とテーマをしっかりと視聴者に見せるために、本体であるストーリー部分の時間を犠牲にするという、制作総指揮としてはかつて前例のない行為である。
・・・という様子だったそうで、実によい曲が生まれたということなのだと思います。
以降は各キャラクターのテーマについて語られていますが、
BEWARE: MAJOR SPOILERS BEYOND THIS POINT!
と、ものすごいネタバレ注意が書かれているので、ここで区切ることにしようと思います。
でも、とても面白いですよ。いかに大変な、そして楽しい作業だったかが伺えます。
画像はFOXチャンネル、トレーラー動画、及びマクレアリーさんの記事からお借りしました。
では。